薄くなっていく傷

自分の腕の傷が薄くなっていくのは嬉しいことのはずなのに、苦しい。

傷が全て治ったら私はどうなるのか。

傷跡に頼って、依存して、生きていたのに。

多分一生消えない傷も数本あるんだけど、それでも、苦しい。

腕に傷が欲しい。瘡蓋になりかけている傷跡が欲しい。

私にとって、腕の傷跡は安定剤なんだと気づいた。

辛くても苦しくても息ができなくなっても、傷跡を撫でたときの凹凸と僅かな痛みで落ち着ける。

切りたい。世間の目も親の目も気にせず、黒いカッターでスパッと。

目みたいにぱっくり開いた傷口から血が出てくる瞬間の快楽を忘れられない。

皮膚を切り裂く感触も、鉄みたいな味の奥にある甘さも、なぜか震えてしまう右腕も、ティッシュに染み込んでいく赤色も、水につけたときの鈍痛も、全部忘れられない。

辞めたいと思っていたつもりだったけど全然そうじゃなかったみたい。